SAHORO.COM > 公聴会の公述原稿

公聴会の公述原稿

                                                      1991 年 8 月 23 日

    北海道知事 様
                                     〒081 北海道上川郡新得町字新内西1線125
                                                    芳賀 耕一(農業・36才)
                                                   01566-4-6893


        狩勝高原サホロリゾート開発事業に係わる
                    環境影響評価に関する公聴会の公述原稿提出について

● 公述原稿提出の理由

 この公聴会で私達が公述した意見は、北海道保健環境部環境調整課環境審査係によ
り要約され北海道環境影響評価審議会に提出されるとの事ですが、内容の切捨ては困
りますので、審議会に直接この公述原稿を提出します。また環境審査係に対しては、
他の公述人の意見についても要約しないで全内容を提出する事を要望します。

● 公聴会の意義について

 環境アセスメント(北海道環境影響評価条例)で住民が関与できるのは、説明会で
の質問・環境影響評価書に対する意見書の提出・公聴会での公述の3回だけですが、
意見書・公述については、不安や疑問に対する回答も無ければ、要望について住民と
協議する機会も一切ありません。ご覧の通り公聴会も私達住民が一方的に話すだけの
ものです。(意見書の提出が無ければ公聴会は開かれません。)
 住民からこれだけ不安や疑問が提出されているのですから、行政はきちんと回答し
てください。また住民からの要望を聴いて事業者に対してどのような指導を行ったか
連絡してください。私達が求めているのは非の打ちどころの無い立派な評価書ではあ
りませんから、評価書の修正で済まされると困ります。住民が納得できる回答を得ら
れないのであれば、事業の中止を求めます。

● 不明確な伐採計画について

 ここで伐採計画を例にとり評価書のいい加減さを明らかにしておきます。

 評価書には『森林として保存する面積は約56.3%』と書かれていますが、新得町民
に配布された「環境影響評価書の概要」では『70%が豊かな植物相をもつ森林となる』
と書き換えられています。

        『計画面積 2,200haのうち新規施設の敷地面積は約36.6%であり、
        森林として保存する面積は約56.3%の計画である。 ・・・・ また既存
        施設の敷地面積は約7.1%である』(p.37)
        『各種施設の造成面積は、事業計画面積 2,200haに対し既存施設は
        約7%、新規造成面積は約23%であり、実に70%が豊かな植物相を
        もつ森林となるように保育、修景されます』(概要)

 私がここで言いたいのは不整合性ではありません。評価書の虚構性です。評価書に
並ぶ虚構に満ちた数字を、整合性だけで審査するアセスメントには価値が無いと言っ
ているのです。

● 新得町財政の観光支出について

 サホロリゾートからの町税はこの5年間に4億2千万円ですが、その75%は地方交
付金を減額されるということなので、実質的な収入は1億1千万円になります。
 それに対し、町が過去10年間に支出した金額は体育館・テニスコートなど15億8千
万円で、補助金などを差し引いた町の実質的な負担は6億9千万円になるそうです。
その上、リゾート活用型という農道空港を始め計上されていない支出もあります。

        私が7月18日に提出した意見書に『15億8千万円の支出を計画』と
        書いたのは誤りでした。

 これだけ多額の支出でも、新得町民にとって価値ある投資と考えるかどうかは、そ
の人の置かれた立場もあり様々でしょう。でも、町民にとって非常に利用しにくい体
育館は町民のための公共施設とは言い難く、多くの町民が不満を持っているのは確か
です。明らかに事業者が負担すべき性格のものを町に負担させていることは、サホロ
リゾートが町民に歓迎されない大きな要因になっています。
 サホロリゾートは『周辺社会全体への経済的発展に寄与する』という大義名分を掲
げ、国や自治体財源を利用しながら事業を行っていますが、地元商工会からの買い入
れは低マージンの上、地元経営者の不満に対しては「事業者としての努力が足りない」
と言うのですから、雇用賃金以外の地元利益はほとんど期待できないでしょう。

 さて今後予定されている町支出ですが、「今の所、町道を作る計画は無いので、上
水道だけになると思いますが、金額はまだわかりません」とのことです。上水道の敷
設は事業支出です。事業のための支出に公金を使わないでください。公金を利用しよ
うとする企業体質は、政財界の癒着・腐敗政治を生み、行政に対する贈収賄事件の温
床になります。サホロリゾートと町行政・町議会に癒着がないのであれば、町は一企
業のために、これ以上公金を支出しないで下さい。

● 廃棄物処理計画について

 残念ながら新得町のゴミ処理は多くの問題点を抱えています。私達ゴミ発生者にと
っては分別無し・負担金無しで非常に楽なのですが、このままでいい筈はなく、資源
回収・プレリサイクル・分別収集・無公害焼却炉建設など、行政と町民が一緒になっ
て改善して行かなくてはなりません。空かん回収を始めたグループの実践は、多くの
町民に考える機会を与えてくれました。「今年の町作り大会ではゴミ問題を考えよう」
という動きもあります。
 ところが大量のゴミを発生させるサホロリゾートの姿勢はどうでしょう。『事業予
定地域内で発生する廃棄物は「新得町じん芥処理場」で処理され、残った不燃物は同
処理場内にある埋立処分場にて処分される』(p.68)としか考えていないのです。ほと
んどの自治体では、事業者が発生させたゴミは事業者の責任で処理する事になってい
ます。サホロリゾートの費用負担は当然の事ですが、まず住民と一緒になって資源回
収やゴミ減量化に取り組んで行こうという姿勢を示してください。

● 農薬使用計画の信憑性について

 ゴルフ場の農薬使用を規制する法的根拠としては、「農薬取締法」「ゴルフ場で使
用される農薬等に関する環境保全指導要綱」(北海道・1990年4月1日施行)「ゴル
フ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針について」(環境庁・
1990年5月24日)「ゴルフ場における芝の病虫害・雑草防除指針 −暫定版−」(北
海道農政部・1991年3月)などがありますが、規制は甘く『良好な環境の保全』とい
う目的にはまったく不充分な内容です。
 その事はサホロリゾートも認めているのでしょう。今回のアセスメントも農薬使用
に関して、法的規制よりは一歩進んだものとなっています。昨年サホロリゾートは駐
車場に除草剤の散布を行っていますが(p.259)、 評価書で『農薬の使用はゴルフ場内
に限定し、 スキー場やホテル、 コンドミニアムの芝地等のエリアでは使用しない』
(p.68)ことを約束しました。また今まで(今年は未定)魚毒性C類の農薬を使用して
来ましたが、 『使用する農薬は魚毒性がA類及びB類に限り、 C類は使用しない』
(p.68)ことも約束しました。農薬使用計画によると、全面散布を行うのはティーグラ
ウンド・グリーンへの殺菌剤だけになっています。そして大量の農薬を散布するティ
ーグラウンド・グリーンについては排水を地下浸透させずに集め、吸着トラップで農
薬を除去する事などが記されています。
 農薬使用計画については、農薬使用量が多いこと・スポット散布の定義が曖昧で拡
大解釈の恐れがあること(フェアウェイの90%に散布するのもスポット散布と言うの
であれば意味がありません)など容認できるものではありませんが、それ以前の重要
な問題として計画自体の信憑性があります。

 まず環境審査係に聞いてみました。
         「評価書にはサホロリゾートによる自主規制内容が書かれ、その
        計画に基づいて環境影響評価が行われていますが、評価書の内容が
        守られるために、道ではどのような指導・監督を行うのでしょうか」
         「農薬についての指導・監督は北海道保健環境部環境対策課特殊
        公害係が行います。評価書内容はあくまでも計画であり、法的な規
        制対象にはなりません。約束を守るのは企業のモラルの問題です。」

 次は特殊公害係です。
         「法的規制が守られていなければ指導を行いますが、それ以上の
        指導・監督は行えません。」
         「それでは、事業者から前年の農薬使用実績・当年の使用予定な
        どが提出される筈ですが、公表して頂けますか」
         「公表する仕組みにはなっていません。事業者と町、あるいは住
        民とで協定を結ぶという形しかないでしょう。事業者と相談してみ
        てください。」

 そしてサホロリゾートは農薬使用実績の公表について、
         「難しい問題なので即答は出来ません。検討させてください。」
という事でしたが、8月16日に受けた回答は、
         「法律に従って町や道に報告しているので、現在の段階では住民
        に対しての公表は考えられません。」
というものでした。

 サホロリゾートは『農薬使用量の実績書の作成及びそれに基づいた年間計画書を作
成し、新得町へ報告する』(p.162) 事を約束していますが、町民に対しては公表でき
ない理由を教えて下さい。サホロリゾートが非公表を決めたことで、住民が農薬使用
の実態について知ることは不可能になりました。法律で決められていないからと、住
民に対する公表を断わったサホロリゾートが、法律に基づかない自主規制を守るので
しょうか。残念ながら、サホロリゾートが今まで行ってきた説明は、すべて裏付けの
無い信頼不可能なものになりました。
 サホロリゾートが住民の信頼を得るための出発点が公開の原則です。サホロリゾー
トは8月28日までに、この問題について再回答してください。
 サホロリゾートの姿勢が変わらず、住民に対して法律で対決して行くというのであ
れば、架空の計画に基づく評価書は無効なので、法律で許されている最大農薬散布量
により環境影響評価をやり直すことを要求します。

● 農薬の流出について

 1989年11月北海道広島町でゴルフ場から流失したオキシン銅のために9万尾の養殖
魚が死にました。オキシン銅を大量に使うサホロリゾートからの流出濃度はどの程度
になるのでしょう。評価書には『不確実な要因を数多く含んでいる』と前置きした上
で、 平均的な降雨で 0.02ppm(0.02mg/l)、豪雨だと 0.3ppm(0.3mg/l) になる可能性
が示されています。0.18ppm のオキシン銅は体長 5cm前後のコイを48時間で半分殺し
ますが、それよりも高い濃度の流出がありうるのです。それでも『環境保全水準は維
持されるものと考えられる』というのがサホロリゾートの自然生態系に対する認識で
す。

 私は「オキシン銅のコイに対する半数致死量は  0.18ppm である」と本に書いてい
るのを見つけた時、 誤植だと思いました。魚毒性 B類の農薬はコイに対する半数致
死量が  10〜0.5ppm と聞いていたし、環境庁によるゴルフ場の排水指針値は 0.4ppm
となっているからです。特殊公害係に問い合わせてみたところ正しいことが確認され
たので、農林省がC類にしない根拠、環境庁が 0.4ppm という指針値を決めた根拠を
調べてもらいましたが、今の所「専門家が総合的に判断して決めた」という事しかわ
かっていません。コイの半数致死量という客観的な実験データ、広島町での大量死事
件という現実を考えると、  とてもオキシン銅の使用を認めることはできませんが、
「魚毒性が低いので 0.4ppm の流出があっても環境は保全される」というのであれば、
根拠を示して私達の不安を取り除いてください。

● ゴルフ場の農薬使用量について

 評価書で提示された農薬使用計画を見てみましょう。新設ゴルフコースは既設ゴル
フコース(グリーンが  412〜558u/1ホール、ティーグラウンドが 8700u/18ホール、
フェアウェイが 94000u/18ホール)の2倍の面積だと仮定して 10a当りの農薬使用
量を計算してみました。 驚いた事に、グリーンの年間農薬使用量は 反当 20kg にな
ります。これは農地での使用量と比較して桁違いに多いものです。

 では、もっとも使用量の多いキノンド80のグリーンへの散布について検討してみま
しょう。 キノンド80は商品名で成分がオキシン銅 80%です。キノンド80は越冬中の
病気を予防するために11月に散布されますが、   ゴルフ場での標準使用量は   反当
2.5kg  との事です。秋蒔き小麦の雪腐れ病予防に使う場合は成分含有量 40%のもの
で  反当 250g〜500g ですから、ゴルフ場には約15倍の標準使用量が認められている
ことになります。
 また、 昨年の農薬散布実績によるとグリーンへの散布は2日間(11/9 と 11/13)
ですが、各ホールについては1回の散布だったようなので、標準使用量で計算すれば
1ホール当り1.2kg になります。それに比べて農薬使用計画の 1ホール当り 4.2kg と
いうのはあまりにも多いのですが、どうしてでしょう。

 その他にも、スミチオンは1回の使用量が、農地では 反当 100ml 程度なのに、グ
リーンでは 反当 800ml も使用することになっています。

 ゴルフ場における農薬散布の特徴は単位面積当りの農薬使用量が非常に多いことで
す。規制がなかった時代の農薬乱用が既成事実となってしまい、農薬メーカー・ゴル
フ場などの業界圧力に屈した形でしか規制が行えない所に根本的な問題があります。
道に対しては規制の抜本的見直しを求めるものですが、住民として法規制の改善をの
んびりと待っている訳にはいきません。

 このように大量の農薬を投入することが本当に効果のあることなのか疑問です。単
位面積当りの農薬投入量と病虫害発生との関係は明らかになっているのでしょうか。
農業での農薬散布量は試験研究の結果、充分な量と考えられたものです。ゴルフ場も
農地に対する農薬散布量まで減量することは容易なはずです。それで芝が枯れるとい
うのであれば、農薬が少ないのが原因ではなく、農薬散布時期や土壌・肥培・排水管
理などに問題があるのでしょう。農薬使用量を増やすのは簡単ですが、農薬使用量を
増やせば防除効果も増大すると思うのは間違いです。農薬は土の微生物相を貧弱にし
ますから、農薬が切れると病原菌が大繁殖する禁断症状の状態を作り出すと言えるで
しょう。

 サホロリゾートはまず今あるコースの減農薬に取り組み農薬の使用を 1/10 に減ら
してください。実績を示さずに住民の理解を得ようとしても無理です。ゴルフコース
増設についての協議はそれからです。道は減農薬の実績が無いサホロリゾートに対し、
ゴルフコース増設を認可しないでください。

● サホロ湖の富栄養化について

 評価書にはサホロ湖の窒素・リン濃度が2倍になるとの予測はあっても、どのよう
な影響があるのかまったく評価していません。サホロ湖がこのように富栄養化した場
合、そして佐幌川の窒素・リン濃度が高くなった場合、サホロ湖や佐幌川に住む生物
はどのような影響を受け、佐幌川の水質はどのように変化するのでしょうか。私達は
佐幌川の水で生きているのですから、上流で水を汚されると非常に困ります。サホロ
リゾートは私達の水の事を、そんなに安易に考えているのですか。

        私は意見書に『p.150  表中 T-P 0.019mg/lは 0.041mg/l の誤り』
        と書きましたが、環境審査係より「間違いではない」との指摘を受
        けました。確かに評価書の通りで計算に誤りは無いようです。サホ
        ロ湖に流れ込む川のリン濃度は  0.041mg/l になっても、サホロ湖
        表層のリン濃度は  0.019mg/l にしかならないそうです。リンはサ
        ホロ湖の湖底に沈澱して蓄積されると言うことなのでしょうか。

● 合成洗剤による水汚染について

 評価書には記載がありませんが、合成洗剤による水汚染の問題があります。LAS な
どの合成界面活性剤は毒性が高く、使用量も多いことから、環境に対する悪影響は計
り知れませんが、 放流水質の規制値としては BOD 値などが決められているに過ぎま
せん。ところが微生物により分解される粉石鹸より、分解されづらい合成洗剤の方が
BOD 値は低く、合成洗剤の使用に関しては野放し状態と言えます。佐幌川上流で大量
の合成洗剤を使用することは川や海を汚すだけではなく、「まず自分達の暮しを見直
そう」とする人々の気持ちを踏みにじるものです。
 環境問題に対する企業姿勢が問われている今、サホロリゾートは「環境問題を考え
て合成洗剤を使用しない」ことを宣言してください。「セゾングループは環境問題に
関しては常に時代を先取りしてきた」「これから自然環境を守っていくのはリゾート
企業になると思う」と話したのはサホロリゾートの井出さんです。もちろん実行して
くれますね。

● 最後に

 今回のアセスメントにより、サホロリゾートの農薬使用実態など現在抱えている多
くの問題点が明らかになった事は良かったと思います。サホロリゾートに対しては、
このアセスメントで住民の信頼を得られなかったことを、まず反省して頂きたい。そ
して少しでも信頼を回復できるよう、環境破壊を減らすよう努力して頂きたいと思い
ます。
 もちろん、これ以上の環境破壊は許されませんから、道に対しては事業の中止を求
めるものです。